「新潟県産の魚、新潟県産の野菜、新潟県産の…」というレストランが増えています。新潟県だけでなくローカル・ガストロノミーは全国に浸透して、地域の食材を使うのはあたりまえ、さらに文化・歴史・風土を料理に表現しようというシェフが増えています。とっても嬉しいことです。でも。10年後には新潟の魚はレストランで使えないかもしれません。新潟の伝統野菜も使えないかもしれません。
なぜなら「獲る人、育てる人」がいないかもしれないから。
近年、魚の乱獲が問題になっています。磯焼けや魚種の変動も問題になっています。伝統野菜は「伝統」のはずなのにF1化が進んでいます。でも、もっと身近な問題、それは「獲る人、育てる人がいない」ことです。
一昨日、金融と地方創生のことを書いたら、たくさん反応をいただきました。「獲る人、育てる人がいない」という問題もまた「お金」にたどり着きます。安く買い叩かれるからたくさん獲る。やみくもに獲るから安くなる。扱いが雑だから安くなる。そもそもデフレだから安くなる…。漁に出てもお金にならないから、船のローンを払えないから、などなど、漁業には問題が山積みです。そんな難題に真っ向から取り組んでいるのが『サスエ前田魚店』の前田尚毅さんだと僕は思っています。
最近、中間流通業者を省く動きが多数あるわけですが、流通業者だからこそできること、アイデアがあるのです。前田さんはレストランの原価と売価を計算して魚を卸していると言います。そして同時に家庭には安くて美味しい魚を、漁師には見合う報酬を考えながら取引していると言います。さまざまな販路を持っている流通業者だからこそできるアイデアには驚くばかりです。
3月11日、前田尚毅さんが新潟県の能生漁港に来てくれます。糸魚川の能生漁港という場所が悪すぎるのかもしれませんが(不便すぎる)、80名定員の会場にまだ空席がある状態と主催の新潟県観光協会から連絡がありました。
前田さんのアイデアは農業にもそのまま応用が効きます。さらに酒屋やスーパー、すべての小売業、流通業者に応用が効きます。後半のパネルディスカッションでは「お金」のことも積極的に聞きたいと思っています。どうやったら「獲る人、育てる人」にもお金がちゃんと回るのか。ネット上での直取引が進むなか、流通業者や小売業者は何をできるのか。リアル店舗だからこそできることはないのか、などなど。
地元産の魚や野菜を欲しがる人が増える一方で、実は獲る人、育てる人がいないという危機。単にレストランで「地元産を使えばいい」というフェーズは終わりました。これからは「地元産をどう繋げ、どう育てるか」の時代。もちろん少量しか獲らない漁業やオーダー分しか作らない農業といった方向性もありますが、地域と産業を考えたときには一定の「量」とそれに伴う「金額」が重要だと思うのです。
そのためには流通業者や生産者、レストランが一体となった改革が必要だと思うのですが、いかがでしょうか。
能生漁港。かなり不便なところではありますが、ぜひ、新潟県内の皆さん、すぐ隣の富山県、長野県の皆さんにもお越しいただきたいと思っています。よろしくお願いします!
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