温泉も素敵だけれど、一番はお料理。
大丈夫! 本当に素晴らしいから。
器使いまで含めて、お料理は完璧です。
料理研究家 松田美智子
女子美術大学卒業後、ホルトハウス房子氏に師事。各国の家庭料理を学び独立。1993年から『松田美智子料理教室』を主催。著書多数。最新刊は「調味料の効能と料理法」(誠文堂新光社刊)、「万能! にんにくみそ床レシピ」(河出書房新社刊)。
私と里山十帖の出会いは夏のこと。二泊三日。せっかくならば何か目的を持って、と、お茶のお稽古をする計画をたてて、仲間と訪れたのでした。旅の目的は人それぞれですが、いつもとはちょっと違う空間にやすらぎを求めて旅に出た私たちにとって、里山十帖で体験したもてなしはとても心地よく、嬉しいことの連続でした。例えば……。とても小さなことですが、ラウンジで好きなときに珈琲が飲めること、夜はお酒も自由に楽しめること。そういうちょっとした心遣いのサービスが過ごしやすさに繋がっていて、とても良いな、と思いました。
夕食は一皿ずつ、少しずつ楽しめるように工夫されているのですが、純然たる会席ではなく、洋の素材を取り入れていたりして個性的。一泊目と二泊目でまったく違うお料理をご用意いただいたことにも感激しました。
とくに印象的だったのが、「鮎のへぎそばパスタ」。仮死状態にした鮎を塩焼きにして、まるごとペーストにし、新潟名産のへぎ蕎麦と合わせたそうですが、これが驚くほど美味しい!今年はチャンスを逃してしまったけれど、来年、自分でもぜひ作ってみたいと思っています。
もうひとつ、忘れられないのが朝食のお味噌汁。たくさんの具材と味噌、だしが別々に用意されていて、自分のペースで自由に自分好みのお味噌汁が作れるんですよね。油揚げを先に入れて、だしに含ませて、野菜を入れて……。夕食のメインディッシュが南魚沼産コシヒカリならば、朝食のメインディッシュはあのお味噌汁。「旅館で味噌汁を完食するなんて珍しいわよね」なんて、笑いながら、お鍋を斜めにして最後の一滴までみんなでいただきました。
よく考えてみると、そうやって、時間にゆとりを持って、友人とゆっくり朝ごはんを食べられるというのはそれだけでとても幸せなこと。よく、仲間たちから「露天風呂がいいのはわかるのだけれど、食事はどんな感じ?」と聞かれますが(笑)、私は自信を持って、「大丈夫。素晴らしいから!」とお答えしています。新旧取り混ぜての器使いも素敵で、そういうところまで含めて、お料理は完璧だな、と思います。
今、地域の活性化のためにも、どんどん地方の食材を食べましょう、まだまだ隠れている美味しいものを発掘しましょう、というムーブメントが盛り上がっていますよね。里山十帖のお料理が素晴らしいな、と思うのは、ずっと新潟にいた人たちではなく、外からやってきた人たちが、外からの目線で新潟の食材の良さや特徴、風土と向き合っているということ。京都・金沢で活躍し、自分のお店をたたんでやってきたという日本料理の料理人・北崎さん、アーユルヴェーダを学び、ヨガのインストラクターでもある桑木野さんという二人の作り手に、岩佐さんというディレクターの目線がプラスされているからこその世界観。新潟の食材を主役にオーガニックな要素を取り入れ、よい意味で〝イマドキ〟なお料理がとても素敵だな、と思います。
今度は冬に。雪見露天風呂も楽しみですが、一番の楽しみはやっぱりお料理。季節が変われば素材も変わります。また新しい驚きと感動を楽しみにお邪魔したいと思っています。(談)
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